疾患について

中咽頭癌

咽頭は解剖学的に3つの部位に分けられますが、そのうち口を開けたとき見える「のど」の部位が中咽頭にあたります。中咽頭癌はさらに、前壁(舌の奥)、側壁、後壁、上壁に分けられます。中咽頭も口腔と同様、嚥下、咀嚼等に深くかかわっていますから、機能を考えた治療が必要です。

1. 中咽頭癌のT分類(腫瘍の大きさ)

※Tの数字が大きいほど進行しているといえます

T1:癌の最大径が2cm以下のもの
T2:癌の最大径が2cm~4cmのもの
T3:癌の最大径が4cmを超えるもの
T4:癌が隣接臓器に浸潤したもの


2. 中咽頭癌のN分類(リンパ節転移)

頭頸部癌全部にいえますが、中咽頭癌でもリンパ節転移の有無が重要な予後因子になります。


3. 当科の治療方針

中咽頭は、音声(しゃべる)、咀嚼(かみくだく)、嚥下(のみこむ)など重要な機能をもっているので、いかに機能を温存するかがポイントになります。一方一般に進行がんでの治療成績は良好ではありません。進行癌では、機能を考慮しつつもしっかりとした治療が必要です。当然進行癌ほど大きな切除が必要となるため、機能障害が多くなります。したがって他癌と同様早期発見が望まれます。 発生部位(前壁、側壁、後壁、上壁)により、少し治療方針が異なりますが、大まかな方針は以下の通りです。

  1. T1N0
    1. 手術による部分切除→機能障害はほとんどありません
    2. 放射線(化学)療法
  2. T2N0
    1. 手術による部分切除+予防的頸部郭清術(肩甲舌骨筋上郭清術)
    2. 放射線化学療法
  3. T1~T2N+
    1. 頸部リンパ節・・・全頸部郭清術  局所・・・放射線(化学)療法
    2. 放射線化学療法
    3. 局所切除+全頸部郭清術+(再建術;腹直筋皮弁、前腕皮弁など)
  4. T3~T4N0
    1. 局所切除+全頸部郭清術+再建術;腹直筋皮弁、前腕皮弁など術後放射線治療を加えることがある
    2. 放射線化学療法
  5. T3~T4N+
    1. 局所切除+全頸部郭清術(両側)+再建術腹直筋皮弁、前腕皮弁など術後放射線化学療法
    2. 放射線化学療法(手術不能例)

4.大阪医科大学耳鼻咽喉科における治療成績

1999年9月~2018年1月まで(最低3年以上観察)の成績。
全国のがんセンター系施設の成績とほぼ同様です。

※詳しくは頭頸部癌治療成績参照。