患者さまへ

ご挨拶

大阪医科薬科大学
耳鼻咽喉科学教室 教授

河田 了

大阪医科薬科大学は1927年(昭和2年)本邦初の5年制医学専門学校として設置されました。開学に遅れること3年、1930年に附属病院が開設され、その際に外科学の一分野として耳鼻咽喉科学教室が独立し、本年(2017年)で88年目を迎えます。初代山崎春三教授から、武田一雄教授、高橋宏明教授、竹中洋教授へと伝統が引き継がれ、小生が2010年2月から第5代教授として教室を担当させて頂いております。

さて、耳鼻咽喉科は文字通り「耳」「鼻」「のど」と比較的狭い範囲を担当する科と思われがちですが、実際には鎖骨から上で、脳と眼球を除く広い範囲にわたる領域を担当しています。また実際の診療内容は、アレルギー、難聴、めまいなどの内科的分野と頭頸部癌、副鼻腔炎、中耳炎、扁桃などを対象とした外科的分野からなっています。特に頭頸部腫瘍に対する頸部外科が耳鼻咽喉科の担当であることは世界的な流れであり、当教室も「耳鼻咽喉科・頭頸部外科教室」へ改称いたしました。耳鼻咽喉科のもう一つの特徴は、重要な機能を有する器官を扱っているという点です。感覚機能では聴く(聴覚)、嗅ぐ(嗅覚)、味わう(味覚)、バランスを保つ(平衡覚)を担当し、さらにはしゃべる(構音・発声)、食べる・飲み込む(咀嚼・嚥下)といった生命の根幹に関わり、生活に質において極めて重要な役割を担っている分野を診断、治療する科であります。

医学部、医科大学の使命には、言うまでもなく診療、教育、研究の三本柱があり、限られた人材、時間、資金のなかでバランスよく実行されることが求められています。診療においては、大学附属病院では、高度で安全かつ最新の良質な医療を提供することが必要です。特に本学のような都市型私立医科大学にはそれらが強く求められていると考えます。当教室では、耳鼻咽喉科・頭頸部外科のなかでの分野別のチーム、診療体制を早くから整備し、各分野においてエビデンスに基づいた最高の医療を提供しています。例えば、頭頸部腫瘍分野では平成11年からこのような体制を整え、それ以来約20年にわたって症例を蓄積してきました。その結果3000例を超える症例をエビデンスに基づいて一定の診断・治療を行うことによって多くの臨床結果を発表することができました。大学附属病院では多数の医師が在籍し、また人事による出入りが頻繁であることから、一定した方針を守って、長期間にわたって症例を集積することが容易ではありません。特に頭頸部腫瘍では、5年あるいは10年さらには20年の経過を追って初めて真実がわかることが少なくありません。このような当教室の長所を生かしてさらに邁進する所存です。研究面においても多くの成果を挙げつつあります。比較的小さな医学部である利点を生かして、基礎教室とコラボして、臨床に還元できるような基礎研究に取り組んでいます。臨床教室の基礎研究は臨床に還元できることが重要であると考えています。当教室では常時大学院生が数名から5名程度在籍しており、研究実施の中心的役割を担っています。

わが国の医師数は現在約30万人ですが、耳鼻咽喉科医はその4%程度にすぎません。守備範囲から考えるとその数字は少ないといえます。特に耳鼻咽喉科勤務医の数は少なく,病床数の多い病院でも耳鼻咽喉科の常勤医がいないところも少なくありません。本教室およびその関連病院においても医師数は不足しており、耳鼻咽喉科・頭頸部外科を目指す医学生、研修医を歓迎します。当教室では臨床、研究ともに高いactivityを保っており、手術件数も全国トップレベルです。将来さまざまな道に進んだとしても「あの教室で臨床、研究ができてよかった」と思ってもらえる教室を目指しています。


診療概要・特色

診療概要

初診は、月曜日から土曜日(奇数週)まで行っている。初診医は受診当日に画像診断や病理学的検査も含めて可能な限り検査を施行、診断した後、各専門外来に振り分けている。専門外来は、難聴、腫瘍、甲状腺、音声・喉頭、幼児難聴・新生児聴検、鼻副鼻腔、鼻アレルギー、めまい、中耳・伝音、補聴器(交代)の10外来があり、耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域をほぼ網羅している。各専門外来では、それぞれのチーフを中心に専門的診断・治療を行っている。一般再診も毎日行っているが、症状が安定し外来での処置で経過観察する必要がある症例に対しては可能な限り近医に紹介している。

入院患者に対して、主治医および担当医がチームを組んで担当し、さらにそれぞれの症例に指導医をおいている。指導医は各疾患を専門とする医師が担当している。入院患者は、入院当日の朝、外来にて科長による入院診を行い、診断・方針等に問題がないかチェックしている。さらに毎火曜日の午後に、入院前の症例検討会を行い、次週の入院症例について検討している。また火曜日の朝8時から、術後及び入院症例検討会を行い、その前1週間に行われた手術および入院症例の検討を行っている。手術は毎週月曜日および木曜日に行っている。手術に際しては、主治医および担当医に必ず指導医がつき、指導医の指導のもとに手術を実施している。回診は、毎週火曜日に医長回診、木曜日に科長回診を行っている。


科の特徴

  1. 以前から病診連携に力を入れており、初診紹介率は50%に近い。平成13年他科に先駆けて、紹介患者予約診察を開始し現在に至っている。
  2. 耳鼻咽喉科疾患全般に対して対応できるが、大学病院である以上、より高度な医療が求められる。そのため専門外来の充実を図り、より専門的な診療を行うことが出来る体制をひき、一貫した治療が行えるようにしている。専門外来で入院の治療方針を決定し、手術をはじめ入院中は専門外来の責任者が指導医となる。さらに退院後も必要な限り専門外来でフォローしている。
  3. 入院前症例検討会、入院診、術後および入院症例検討会さらには科長回診・医長回診を行い、各症例を何重にもチェックできる体制を整えている。
  4. システムの効率化、クリニカルパスの導入、治療プロトコールの見直しを行った結果、平均在院日数は13〜15日で推移している。
  5. 耳、鼻、頭頸部腫瘍、喉頭をはじめとした手術を、年間941件(平成22年度)施行している。その手術件数は、全国大学附属病院の中でも上位に位置している。
  6. 他科との協力により、より高い水準の医療を試みている。拡大・再建手術で消化器外科、形成外科、脳外科などと連携して診断・治療にあたっている。
  7. 病診連携・病病連携には以前より力をいれており、当科が主催する各種研究会・勉強会を通じて交流を深めている。逆紹介も盛んに行っている。
  8. 平成13年の本院救急外来設立以降、当科は救急特科として、休日・時間外の耳鼻咽喉科疾患に対応している。
  9. 誤嚥や二次性副甲状腺機能亢進症に対して、QOL向上の観点から積極的に手術を施行している。