下咽頭癌
下咽頭は咽頭(のど)のなかでも下方の部位をさし、中咽頭と食道の間の部分です。頭頸部癌のうちでは、口腔、喉頭、甲状腺についで多く10%あまりを占めます。発がんには長年の喫煙、大量飲酒が大きく関与するとされています。早期には特徴的な症状がないため、その大部分が進行癌で発見され、頭頸部癌のなかでも最も予後不良の癌です。治療の主体は手術ですが、多くが進行癌であるため、すぐ前に位置する喉頭(声帯)を犠牲にせざるをえない場合がほとんどです。
1. 下咽頭癌のT分類(腫瘍の大きさ)
※Tの数字が大きいほど進行しているといえます
T1:癌が1亜部位に限局し、最大径が2cm以下のもの
T2:癌が1亜部位をこえるor隣接部位に浸潤or最大径が2cm~4cmのもの
T3:癌の最大径が4cmを超えるものor声帯の固定を認める
T4:癌が隣接臓器に浸潤したもの
下咽頭癌は発生部位によって、3つの部位(亜部位)すなわち梨状陥凹、輪状後部、後壁に分けられます。
2.下咽頭癌のN分類(リンパ節転移)
頭頸部癌全部にいえますが、下咽頭癌でもリンパ節転移の有無が重要な予後因子になります。下咽頭癌のリンパ節転移率は高く、両側の頸部に転移する場合も少なくありません。
3. 当科の治療方針
下咽頭は嚥下(のみこむ)にかかわるなど重要な機能をもっているので、いかに機能を温存するかがポイントになります。しかし、下咽頭の前には喉頭(声帯)が位置し、断然進行がんが多いため、機能を犠牲にせざるを得ない症例が大多数です。下咽頭癌が頭頸部がんのなかでも最も予後不良の癌であり、しっかりとした治療が必要です。また下咽頭癌は食道癌との合併が30%程度に認められ、食道の精査が必須となります。 大まかな方針は以下の通りです。
咽頭の再建には空腸を用います。
- T1N0
- 放射線(化学)治療
- 直達鏡下切除術
- T2N0
放射線(化学)治療 - T1~2N+
頸部リンパ節・・・全頸部郭清術、局所・・・放射線化学療法 - T3~4N0
- 咽頭喉頭全摘術+予防的頸部郭清術
- 喉頭全摘術+予防的頸部郭清術
- 放射線化学療法
- 1)2)の場合は術後放射線(化学)療法を追加することがある
- T3~4N+
咽頭喉頭全摘術+予防的頸部郭清術、術後放射線化学療法
4.大阪医科大学耳鼻咽喉科における治療成績
1999年9月~2019年10月まで(最低3年以上観察)の成績。
全国のがんセンター系施設の成績とほぼ同様です。
※詳しくは頭頸部癌治療成績参照。