喉頭癌
喉頭癌は頭頸部癌のなかで最も頻度の高い癌です。発生する部位によって、声門癌、声門上癌、声門下癌に分けられます。声門癌、声門上癌、声門下癌の順に多く、声門下癌はまれで、声門癌:声門上癌の頻度は約2:1です。声門癌と声門上癌では、癌の性質(進展形式など)が異なるため、下記のように治療方針が違ってきます。
喉頭は「声」という重要な機能を担っているため、その機能をいかに温存するかが治療のポイントになりますが、進行癌では必ずしも予後良好ではなく、しっかりとした治療が必要です。そのため何より早期発見が重要です。
1. 喉頭癌のT分類
※Tの数字が大きいほど進行しているといえます。
【声門癌】
T1:声帯運動が正常で、癌が声帯に限局するもの
T2:癌が声門上部あるいは声門下部に浸潤するもの。または声帯運動に制限があるもの
T3:声帯が固定(声帯が動かない)するが、喉頭内にとどまるもの
T4:癌が喉頭外に進展したもの
【声門上癌】
T1:声帯運動が正常で、癌が声門上部の一部に限局するもの
T2:声帯運動が正常で、癌が声門上部内で広がるか声門に浸潤するもの
T3:声帯が固定(声帯が動かない)するが、喉頭内にとどまるもの
T4:癌が喉頭外に進展したもの
2. 喉頭癌のN分類(リンパ節転移)
頭頸部癌全部にいえますが、下咽頭癌でもリンパ節転移の有無が重要な予後因子になります。下咽頭癌のリンパ節転移率は高く、両側の頸部に転移する場合も少なくありません。
3. 当科の治療方針
喉頭は、音声(しゃべる)という重要な機能をもっているので、その機能を温存することがポイントとなりますが、進行癌では音声機能(声帯)を犠牲にせざるをえない場合も少なくありません。声門上癌は声門癌と比較して、リンパ節転移をきたしやすく予後も悪いため、声門癌より厳しい治療になっています。一般的方針として早期癌では放射線治療で喉頭(声帯)を温存し、進行癌では喉頭摘出もやむをえません。
【声門癌】
- T1N0
放射線治療 - T2N0
放射線化学治療 - T1~2N+
頸部リンパ節・・・全頸部郭清術、局所・・・放射線化学療法 - T3NO
- 喉頭全摘術
- 放射線化学療法
- T4N0
喉頭全的術
術後放射線(化学)療法を追加することがある。 - T3~4N+
喉頭全摘術+頸部郭清術+術後放射線(化学)療法
【声門上癌】
- T1N0
放射線化学療法 - T2N0
放射線化学療法 - T1~2N+
- 頸部リンパ節・・・全頸部郭清術、局所・・・放射線化学療法
- T2では、喉頭全摘術+全頸部郭清術
- T3N0
- 喉頭全摘出術+予防的頸部郭清術
- 放射線化学療法
- T4N0
喉頭全摘出術+予防的頸部郭清術
術後放射線(化学)療法を追加することがある。 - T3~4N+
喉頭全摘出術+両側頸部郭清術+術後放射線(化学)治療
4. 当科の治療方針
喉頭(声帯)を摘出すると、声帯による発生ができなくなりますので、他の方法が考案されています。
一つは食道発声法で、簡単にいえば「ゲップ」の原理です。これは習得がやや困難ですが、道具がいらないという利点があります。もう一つは人工電気喉頭という器械があり、くびに押しあてて口を動かすことによって発声する方法です。器械が必要ですが、習得が簡単なのが利点で、高齢者には適した方法です。
5.大阪医科大学耳鼻咽喉科における治療成績
1999年9月~2019年12月まで(最低3年以上観察)の成績。
全国のがんセンター系施設の成績とほぼ同様です。
※詳しくは頭頸部癌治療成績参照。