疾患について

唾液腺癌

「耳下腺腫瘍」参照

唾液腺は唾液(つば)を産生する組織で、大きなものは3つあり、耳下腺(耳の前から下にある)、顎下腺(あごの骨の下にある)、舌下腺(舌の下にある)があります。唾液腺腫瘍には良性と悪性(がん)があり、頻度的には良性:悪性が10:1です。唾液腺悪性腫瘍(唾液腺癌)は、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌とは異なり、多くの「型」があるため、術前診断が極めて重要と考えられます。その「型」によって悪性度が全く異なります。また頻度的には良性腫瘍が多いわけですから、良性、悪性の鑑別診断が重要であるのは言うまでもありません。

唾液腺癌は症例数が少ないため、確固たる治療方針を持っている施設で治療することが求められます。 ここでは唾液腺癌のなかで頻度の高い耳下腺癌について述べます。


1. 耳下腺癌のT分類

T1:2cm以下のもの
T2:2~4cmのもの
T3:4~6cmのもの
T4:6cm以上あるいは顔面神経麻痺、頭蓋底浸潤を認めるもの


2. 耳下腺癌のN分類(リンパ節転移)

耳下腺癌も頸部のリンパ節に転移します。各「型」によって転移率が異なり、それに従った治療が大切です。


3. 当科の治療方針

耳下腺癌といっても1種類ではなく、多くの「型」が存在します。その「型」によって悪性度は著しく異なります。そのため、治療前にどの「型」であるのは診断することが極めて重要です。 耳下腺のなかには顔面神経(顔を動かす神経)が走行しているという解剖学的特徴があり、手術にあたって顔面神経の処理法が問題となります。腫瘍の大きさ、位置、悪性度によって決定します。 唾液腺癌(耳下腺癌)は、「型」にもよりますが、一般に放射線治療や化学療法が有効ではありません。したがって手術が治療の主体になります。 以上のような耳下腺癌の特殊性を考慮して、治療方針を決定しています。